
この記事はこういった人のために書きました。
この記事を書いた人
IT業界での長年のキャリアと、過去の転職経験、現役の採用面接官として信頼性の高い情報を発信しています。
この記事でお伝えしたいこと
- まず転職の目的を明確にする必要がある
- 転職の目的を明確にしないとどうなるか
- 転職の目的がわからないときのヒント
- 【体験談】筆者の転職の目的
この記事では、転職の目的を明確にするべき理由について、これまでの僕の経験も踏まえてお話します。

現在、転職活動を考えている方、転職の目的がよくわからず悩んでいる方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
まず転職の目的を明確にする必要がある
「あなたはなぜ転職するのですか?」
唐突にこう聞かれて、すぐに答えることができるでしょうか。
転職を考えるきっかけは人それぞれです。
転職・求人dodaの「転職理由ランキング2019」によると転職理由のトップ5は下記の通りとなっています。
- 1位:他にやりたいことがある
- 2位:給与に不満がある
- 3位:会社の将来性が不安
- 4位:残業が多い/休日が少ない
- 5位:専門知識・技術を習得したい
出典:doda「転職理由ランキング2019」
転職理由には、ポジティブな理由があれば、ネガティブな理由もあると思います。
ここで大事なことは、
- 他にやりたいことがあるから転職する
- 給与に不満があるから転職する
- 会社の将来性が不安だから転職する
- 残業が多い/休日が少ないから転職する
- 専門知識・技術を習得したいから転職する
単純にこのように考えて転職活動をはじめると、その転職は失敗する可能性があるということです。
理由は、これだと「現状からの脱却」でしかないからです。
転職は、新しい会社に入ってみるまで成功かどうかわかりません。
現状からの脱却だけを考えて転職しても、
- 思っていた仕事内容じゃなかった
- 思っていた待遇じゃなかった
- 思っていた職場環境じゃなかった
と、なるかもしれませんし、そもそも書類選考や面接で落とされる可能性も高いです。
もちろん、現状に不満や不安がある人にとって、そこから脱出することは大事なことなので、それ自体を否定はしませんし、現在何らかのハラスメントを受けていたり、労基法違反を強いられているような人は、今すぐにでも脱出した方がよいです。
ただ、転職活動に本当に必要なのは「転職の真の目的」を考えることです。
転職の真の目的とは、単純な現状の脱却ではなく、転職によって成し遂げたいことは何か?ということで、さらにいうと、それは人生の目的そのものに直結することであるべきなのです。
月並みな言葉ですが、わかりやすい例えでいうと「自己実現」、さらに言うと「夢」ですね。
例えば、こういう例を見てみましょう。
- 今の会社は残業が多い割に給料が安い
- 仕事内容はやりがいがあり続けていれば「経営者になる」という夢をかなえることができそう
- 最近子供が産まれてこれからお金がかかる
- 奥さんはもっと給料の良い会社に勤めてほしそうにしている
この例では、あなただったらどういう選択をしますか?
家族に我慢をさせて、やりがいのある仕事を取るか、仕事の夢を捨てて家族のために転職するか。
その人のポリシーや人生観次第なので、どちらが良いというものではないですよね。
仕事で夢をかなえたいのであれば、家族を説得して、自分も節約に努め会社に留まるというのもひとつの道ですし、仕事の夢を捨てて家族のために良い給料を得て豊かに生きるのもひとつの道です。
良いとこどりをするために、給料が良く、仕事の夢をかなえられそうな会社に転職するのも道です。
いずれにせよ、確固たる「人生の目的」を持ち、ここがブレることなく思考し行動できるのであれば、本当に転職をするべきかどうか、転職するならどういう条件で転職するべきかが自ずと見えてくるということです。
転職とは、人生の目的を達成するための手段のひとつに過ぎず、転職自体を目的とするべきではありません。
転職は人生の一大事です。
そんな人生の一大事を目の前にするのですから、
- 自分は将来何になりたいのか?
- どのような生き方をしたいのか?
- そのためにどんな転職をするべきなのか?
ということを徹底的に考え抜いてみることをおすすめします。
これを行うことが、あなたの転職成功への第一歩となりますし、人生そのものも理想に近づくかもしれません。
転職の目的を明確にしないとどうなるか
社員口コミサイトの大手、転職会議の調査では、転職者全体の4人に1人が転職したことを「失敗」と感じているという結果になっています。
転職は「成功」と感じている人が約74%いる一方で、「失敗」と感じている人が、全体の26%に登ることが判明しました。 4人に1人は転職したことに後悔しているということです。
出典:転職会議Report
転職の「真の目的」を明確にしないまま転職活動をするとどんなリスクがあるか具体的にお話します。
志望動機が書けない
これはイメージしやすいと思いますが、転職の目的がしっかりと持てていないと説得力のある志望動機が書けないはずです。
転職そのものが目的になってしまっている人ほどこれに陥りやすいです。
- 給料がよさそう
- 残業が少なそう
- 雰囲気がよさそう
目的なしにこういう理由で会社を選んでしまうと、この会社で何を実現したいのかや、自分を採用するメリットを語れなくなります。
公式サイトから取ってつけたような内容を志望動機にしてしまい、書類選考で落ちてしまうパターンです。
面接に進めたとしても、突っ込まれて答えられなくなり、内定を勝ち取るのは難しいでしょう。
転職後にギャップに苦しむ
転職の真の目的が明確になっていないと、本当に入社すべき条件で会社を選ぶことができなくなります。
目的がない、もしくはわからないので、つい給料や残業時間、会社のイメージや雰囲気といった目先のメリットに飛びつきたくなります。
例えば、単純に給料だけで会社を選び、その会社でも業務内容・職務内容をあまり調べていなかったりすると、給料はいいけど仕事がつまらないということになりやすいです。
家族との時間を大事にして土日や休暇で家族旅行なども行きたいたいという方は、一般的には下記の条件ふたつを満たせる会社を選ぶと良いと思います。
- 給料アップ
- 残業が少なく土日が休める
しかし、給料だけに目がくらんで業務の実情を調べずに入社した結果、実は激務で休めなくなったということもあるでしょう。
誰もが知っている有名企業にイメージだけで入った結果、全くイメージと違う業務内容だったり、実は年次を重ねても給料が伸びない会社だったということもあると思います。
いろいろな例が考えられますが、目先のメリットだけを見て転職するのは非常に危険です。
転職の目的が明確になっていれば、その目的を達成できる条件を正しく押さえ、条件に見合った会社を選択し情報収集をすることができ、入社後のギャップに苦しむリスクを減らすことができます。
転職を繰り返すジョブホッパーになる
繰り返しですが、転職の目的が明確でない人は、つい給料、勤務時間、企業イメージなどの目先のメリットに飛びつきたくなりますが、そういう人ほど入社後のギャップに苦しみ「こんなはずじゃなかった」となりがちです。
そうなると、他の企業に目がいき「隣の芝が青く見える」ようになり、また転職活動を考えてしまうことになりやすいです。
転職を繰り返す人をジョブホッパーと言いますが、会社で明確な成果が出せないまま転職を繰り返すジョブホッパーは、転職市場ではとても低く評価されてしまいます。
その結果、どんどん自分の希望する就業条件から遠ざかる悪循環に陥ります。
逆に、転職を繰り返す人の中には、転職のたびにポジションや年収が上がっていく人もいます。
そういう人はジョブホッパーではなくキャリアビルダーと言われ、自分の将来像・ゴールイメージを明確に持てている人たちです。
将来像やゴールイメージ、つまり「転職の真の目的」を明確に持てているので、転職先の会社でどのような経験をして、どのような成果を挙げるべきかを知っています。
僕は転職自体は悪いことではなく、キャリアビルダーになれるならどんどん転職すればいいと思っていますが、そのためにも、「転職の真の目的」を考え抜いて、正しい会社の選択をすることがとても大事です。
転職の目的がわからないときのヒント
転職の目的を考えてみても、わからないという方もいると思います。
また、現状の不満が大きすぎてまずそこから脱出することが先だという方もいるかと思います。
そういうときは、こんな風に逆アプローチで考えてみてはいかがでしょうか。
転職目的の考え方
- 転職を思い立ったきっかけ(不満・不安)を洗い出す
- 不満・不安が生まれる背景を洗い出し改善策を考える
- 最も優先度の高い改善策を決める
- 最終的な自分のゴールイメージを明確化する
step
1転職を思い立ったきっかけ(不満など)を洗い出す
まずは、なぜ転職をしたいと思ったのか、そのきっかけを洗い出します。
例えば下記です。
- 他にやりたいことがある(今の仕事がつまらない)
- 給与に不満がある
- 会社の将来性が不安
- 残業が多い/休日が少ない
- 専門知識・技術を習得したい
ここでは、こういったレベル感でOKです。
たぶん、現状の不満や不安など、いまあなたが脱出したい状況そのものになるのではと思います。
step
2不満などが生まれる背景を洗い出し改善策を考える
次に、その不満や不安がなぜ生まれているのか、その背景を考えます。
例えば、Step1で下記が転職を考えるきっかけだったとします。
- 給与に不満がある
給与が安い理由には、下記のような理由があるはずです。
- 給与に不満がある
【理由①】会社の業績が悪い
【理由②】自分の評価が低い/評価基準が不透明
【理由③】同業他社より給与テーブルが低く設定されている
あなたが給与に不満を抱く理由はこのどれに当てはまりますか?
もちろん、上記以外の理由でもOKでが、仮に下記だったとしましょう。
【理由②】自分の評価が低い/評価基準が不透明
次は、それに対する解決策を考えてみます。
- 給与に不満がある
【理由②】自分の評価が低い/評価基準が不透明
【解決策①】スキルアップして評価を上げる
【解決策②】評価基準が不透明でない企業を探して転職する
【解決策③】本業以外で収入を増やす(副業)
Step1で理由が2つ以上ある方は、それぞれの理由で解決策を導き出せばOKです。
step
3最も優先度の高い解決策がどれか決める
次に、複数洗い出された解決策の中で優先順位をつけ、最も優先度の高い解決策を決めます。
- 給与に不満がある
【理由②】自分の評価が低い/評価基準が不透明
【解決策①】スキルアップして評価を上げる
【解決策②】評価基準が不透明でない企業を探して転職する
【解決策③】本業以外で収入を増やす(副業)
優先順位の付け方はそれぞれですが、「最も実現性の高い解決策」を選ぶことが良いと考えています。
ここで、スキルアップに励めば給与が上がり不満が解消されるというなら【解決策①】を選択。
スキルアップできる可能性が低い、評価が上がっても満足する水準ではないなら【解決策②】か【解決策③】を選択。
といった感じです。
もしここで【解決策①】【解決策③】を最も優先度高とするなら、転職は必要ありませんよね?
このように考えていけば、自分のできる範囲の中で、現在の不満に対する解決策が絞られてきます。
現状の不満が「給与に不満がある」だけでない場合も、この時点で優先順位が付けられているはずです。
転職をするべきかどうかも、この時点でだいたい見えてくると思います。
step
4最終的な自分のゴールイメージを明確化する
とにかく現状の不満が大きすぎてすぐにでも脱出をしたい、という方は、この時点で転職活動を開始してもOKですが、できれば最後に、最終的な自分のゴールイメージを明確にすることがおすすめです。
Step3で、複数の解決策に対して優先順位をつけたと思います。
ここで、優先順位をつけた理由を深堀りしてみましょう。
- 転職してでも給与にこだわりたい理由はなにか?
- 自分自身のスキルアップやキャリアアップにこだわりたい理由はなにか?
- とにかくワークライフバランスの実現にこだわりたい理由はなにか?
ここから先は、あなたの人生観に深くかかわってくること、すなわち「転職の真の目的」になります。
自分が人生で何を大事にして生きていきたいのか、将来どんな暮らし方をしたいのか、深く考えてみてください。
ここで強めに言いたいことは、この考え方をブレさせないようにしましょう、ということです。
ここで抽出した「転職の真の目的」を頭の片隅に置いておけば、会社の選び方に失敗することも減り、そもそも転職自体が正しいのかどうかを考え直すことにもなるため、転職を後悔する可能性が格段に減るのではないかと思います。
【体験談】筆者の転職の目的
僕はこれまで2度の転職を経験しています。
1度目の転職の時は「給与を上げたい」ということしか考えていませんでした。
証券系のSIerにインフラエンジニアとして転職したのですが、はっきりいうと企業研究をほとんどしていませんでしたし、転職の真の目的など考えもしていなかったです。
最初から給与が良い会社だということはわかっていましたし、内定前の条件面談では当時の年収から150万以上アップしたため、その時点で目がくらみ、安易に入社を決めてしまいました。
金融系のシステム開発がどのようなものか全く調べもせず、エージェントの話も半分しか聞いていませんでした。
結果、入社後に「こんなはずじゃなかった」と激しく後悔しました。
教科書に書いてあるような、お客さんと要件定義やって、2次請けの会社やSESのエンジニアへの指示や管理をしておけばいいんだろうと安易に考えており、金融システムの社会的責任の重さだけでなく、開発と運用保守部隊との確執の深さ、技術力より付き合いの深さが重視される大企業文化に打ちのめされました。
当時の自分は、重厚長大なプロジェクトのPM・サブPMといった立場ではなく、技術力をつけながらチームをけん引するチームリーダーとしての経験を積むべきでした。
給与の良さに目がくらみ、目先のメリットに飛びついた結果、技術力も中途半端、マネジメントスキルも中途半端な状態で転職した結果、プロジェクトにも迷惑をかけましたし、会社からもなかなか評価されませんでした。
結局、この会社には2年務め、どうにかこうにか他人に語れる成果を残すことができ、再度転職をすることになりましたが、この失敗を繰り返さないよう、徹底的に転職の目的を考えました。
僕は人生においてエンジニアとしてのキャリアアップを重視していることに気づき、インフラエンジニアからPMへ、そしてマネージャーになれるSIerを選び、今に至ります。
まとめ
転職の目的を明確にするべき理由について、これまでの僕の経験も踏まえてお話しましたが、いかがでしたでしょうか。
転職の目的は人それぞれで、最初はどうしても現状の不満からはじまり、目先のメリットに飛びつきたくなります。(僕もそうでしたし)
しかし、自分の人生をどのようなものにしたいのか、どんな暮らしを将来したいのかを考えてこそ「真の転職の目的」が見えてきます。
繰り返しになりますが、転職は人生の一大事です。
転職を思い立ったことをきっかけに、転職を成功に導くためにも、あなたのこれからの人生を改めて見つめてみることをおすすめします。